Vol. 5 分譲マンションストック500万戸時代をむかえて(後編)

前編からのつづきです。

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図-1 分譲マンションのストック数(平成19年末・推計)

3.今後のマンション政策における基本的な考え方

(1)住宅ストックとしてのマンションの重要性

わが国のマンションは、土地利用の高度化の進展に伴い、都心居住という利便性や住空間の有効活用という積極的な評価もあり、国民の約10%が居住する重要な住宅ストックとして位置づけられます。最近では、単棟のマンションや団地型のマンションのほか、超高層マンションの出現など、居住ニーズに対応した多様な形態のマンションがみられるようになりました。

マンションは、居住者にとっての生活基盤であるとともに、地域にとってまちづくりやコミュニティ活動の拠点となる重要な社会基盤です。良好なコミュニティが形成されることはマンション管理において重要であり、地域における社会活動の持続や安全・安心な市街地の形成という観点からも重要となっています。このように、マンションは個人の私的生活の場にとどまらず、活力・魅力ある地域社会を形成する上でも重要な要素であり、このような社会的ストックとしての重要性から、マンションについては日々の管理のみでなく改修・建替えといったマンションのライフサイクル全体をとらえ、そのあるべき姿を念頭に置いて維持管理・再生を行うことが必要です。

(2)老朽マンションの再生の重要性

今後老朽マンションの増加が見込まれますが、その再生のための改修・建替えなどの円滑化が重要となっています。マンションの共用部分は、居住者が安心して快適な生活を営む上で不可欠な基盤となるものですが、居住者の高齢化などに伴い、通路、階段、エレベーターなどの共用部分がバリアフリー対応でないなど、居住者のニーズに適合しなくなるなどの状況が見られます。また、旧耐震基準によって建設された耐震性の低いマンションも多く存在します。国では住宅の質の向上を図るため、新耐震基準への適合や共用部のユニバーサル化などについて住生活基本計画において数値目標を定めていますが、ストックとして課題のあるマンションの改善について適切な改修・建替え等を支援していく必要があります。特に、耐震性の劣っているマンションのほか、都市全体の居住環境に影響をおよぼすマンションや保安上危険または衛生上有害な状況にあるマンションについては、都市環境や住宅政策の観点から国および地方公共団体は積極的に改善を進めなくてはなりません。

このように老朽マンションの再生が重要とされる一方で、改修・建替えなどの実施にあたって、資金や専門的な知識が必ずしも十分でなく、またマンション内の多数の区分所有者の合意形成が容易ではないなどの状況もあります。このため、資金面での支援措置の充実、改修・建替え等のノウハウを有する専門家の関与による事業の実施の推進、円滑な合意形成を可能とする制度や運用などについての検討を行っていく必要があります。また、様々な支援制度が、管理組合や区分所有者などにとって活用しやすいものとなるよう、国・地方公共団体および関係団体において分かりやすく制度を紹介するための広報活動や相談体制の整備に積極的に取り組む事が必要です。

改修については、区分所有者の費用負担が問題となるほか、専有部分・共用部分の区分、専有部分の増築や専有部分に影響がおよぶ共用部分の改修を行う場合の合意形成などが問題となることがあります。また、建替えについては、事業を実現するまでに様々な手続きが必要となり、建築基準法上既存不適格となっているマンションではマンション単体で不適格状態を解消することは難しいなど、法制度上の問題で建替え実現に至らない場合や円滑に進まない場合があります。マンション円滑化法制定から6年が経過していますが、建替え事例は多いとは言えず制度が十分浸透していない一方、建替え事業の実施には迅速な対応が求められます。また、大規模な団地では合意形成が容易でないばかりか、建替えを円滑に行うことが難しい、仮住居の確保が難しいといった問題があります。このように、マンションが区分所有建物であるがゆえの問題が多く存在し、合意形成等に要するコストは相当程度かかりますので、このコストの低減を図るという観点から引き続き老朽マンションの再生のための施策が重要です。

4.今後のマンションの具体的施策

(1)管理組合による計画的な管理等の推進

マンションでは、管理組合を構成する区分所有者が管理規約を適切に定め集会を開き、管理に関する意思決定を適切に行っていくことが重要です。管理規約について、当該マンションの実態およびマンション区分所有者の意向を踏まえ適切なものを作成し、常日頃から適切なマンションの維持管理を行っていくことが重要です。また居住者間および地域とのコミュニティ形成に努めることも必要です。また、複数の管理組合が連携し、知識や情報を共有し、管理の担い手やコミュニティを育むことも期待されます。

また、経年による劣化に対応した将来の大規模修繕などに備えて長期修繕計画を作成し、これに基づき修繕積立金を計画的に積み立て、また快適な居住環境を確保し資産価値の維持・向上を図るためには適時適切な維持修繕が重要です。

(2)管理状況の適正な評価等

管理組合の運営状況、修繕積立金の積立状況、修繕履歴や長期修繕計画などの情報が開示され、市場でこれらが適切に評価されることは、マンションの適正な取引・中古マンションの活性化につながります。また、このような評価により区分所有者にとっても開示対象の各項目が適切なマンション管理が行われていることを示す指標的な役割を持つことになり、また適切な管理を行うインセンティブにもなります。

マンション履歴システム(マンションみらいネット)は、マンションについて管理組合から登録を受付けその管理状況や修繕履歴などを情報開示する仕組みですが、そのメリットについての理解がまだ十分には浸透していません。現在、登録による各種の情報提供や支援サービスなどのインセンティブ付与のための取組みも行われていますが、引き続きその充実を図り情報開示のメリットを訴え普及を推進していく必要があります。

(3)マンションの管理等の専門化の活用

マンション管理は専門的な知識を必要とすることが多く、区分所有者は問題に応じマンション管理士、マンション管理業者などの専門的な知識をもつ人の支援を得ながら対応する必要があります。

マンション適正化法において、マンション管理士やマンション管理適正化推進センター、マンション管理業者などの制度が位置づけられており、建築士、弁護士などの専門家とともに、必要な助言や業務を行ってきていますが、さらなる体系的かつ定期的な研修や人材育成の実施・充実により、これらの専門家の能力を向上させマンション管理の適正化を進めることが重要です。

また、地域レベルでは、地方公共団体および関係団体による相談窓口の設置や相談会の開催、専門家の派遣などの取組みが行われていますが、こうした取組みを積極的に推進する必要があります。

(4)第三者管理方式の活用による管理の適正化促進

区分所有法では、マンション管理者は、区分所有者でもそうではない第三者でもなることができることとされています。区分所有者が専門家ではないこと、さらに最近では高齢化、賃貸化、管理への無関心などにより、適正な管理が必ずしも行われていない状況も見られ、マンション管理に精通した人を管理者として選任し、マンション管理を行わせるいわゆる第三者管理者方式の活用を図る事例は今後増加していくと思われます。また、投資型のマンションなどの一定の形態のマンションでは区分所有者による管理組合方式の採用が困難で第三者管理方式が採用されている事例も見受けられます。

この第三者管理方式には、管理に関する権能が集中し専門家として効率的に業務ができるというメリットがある一方で、区分所有者ではないことから区分所有者の意思を離れて不適切な管理が行われるおそれもあります。このため、第三者管理者による区分所有者への定期的な業務報告およびその業務に対する監査などのチェックの仕組み、管理コストの低減につながる管理方法、第三者管理者方式の場合の財産の分割管理などのあり方や対応方針を検討し対応策を講ずる必要があります。

(5)マンションの管理等をめぐる紛争処理への対応

マンション管理をめぐる紛争は多岐にわたり、それぞれの紛争の形態に対応した処理が求められます。例えば、技術的・専門的な知識の不足に伴う紛争については、専門家などの指導・助言による支援体制を整備することで、一定の対応が可能だと考えられます。

また、マンションの管理規約は、マンション管理の最高自治規範であることがマンション適正化指針に示されていますが、マンション管理規約、使用細則などにおいて、紛争を未然に防ぐ具体的なルールを定めておくことが重要です。

たとえば、管理費滞納紛争については、現在深刻な問題の一つであり、現行制度上小額訴訟や区分所有権の競売の請求などの対応策が用意されていますが、一定の要件が必要など、円滑な解決という観点からは必ずしも十分ではありません。滞納に対する段階的な催促手続きや管理組合による滞納者への制裁措置などを定め、管理組合の姿勢を区分所有者に明示して、予防的に対応することも考えられます。

また、管理組合の運営や管理組合役員の不適切な業務実施をめぐる紛争、マンションでの相隣関係をめぐる紛争についても、同様に予防的な措置などをあらかじめ定めておくことも考えられます。

さらに、今後多岐にわたる紛争の中で、紛争解決の対象として適切なものを特定した上で、第三者機関による裁判外紛争解決手段(ADR:Alternative Dispute Resolution)を導入することも検討する必要があります。この場合、「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律」に基づく認証等を活用して導入することも考えられます。

(6)多様なマンション形態に対応した施策

現在、多様な形態のマンションが存在し、これらの形態に対応した施策が必要です。

団地型のマンションの管理については、複数の棟のマンションが団地を形成していることから、団地全体の管理と各棟の管理との間で、たとえば管理費や修繕積立金の額を棟ごとにするのか団地全体での一律の設定とするのかなどの調整が必要です。各棟により事情が異なる場合は、なるべく諸事情に対応して棟ごとに管理費の額の設定や徴収を行うことが望ましいのですが、円滑にこれらが実施されるように、団地型マンションにおける管理のガイドラインの作成、その適切な管理に資する啓発等が必要です。さらに団地型のマンションの改修・建替え等の再生についても、その課題解決のための検討が必要です。

さらに、近年超高層マンションが急増しており、これから本格的に大規模修繕などが必要な時期を迎えることが見込まれますが、超高層マンションでの管理の実態は必ずしも明らかではありません。実態把握および課題を抽出し、その上で必要に応じた制度、運用等の見直しを行う必要があります。

(7)管理組合が機能していないマンションへの対応等

管理への無関心化や担い手不足により管理規約が存在していないなど、管理組合がまったく機能していないマンションの存在が指摘されています。また、今後、高齢化、賃貸化、無関心化の進行などを背景として、こうしたマンションが増加するおそれがありますが、現行制度では、いまだ積極的に管理の適正化を促す施策が行われていません。

国、地方公共団体および関係団体は、引き続き区分所有者への啓発活動を実施し、こうしたマンションの発生および増加を未然に防ぐとともに、実態把握に努め、諸外国の事例等も踏まえながら、こうしたマンションにどう対応していくかを検討していく必要があります。

また、将来的には集合住宅の居住形態について、区分所有権による居住のみならず賃貸化や所有・利用の分離化を行うなど様々な居住形態へと移行していくことも考えられ、このような居住形態について、そのあり方を検討していくことも求められます。

(8)老朽化マンションの再生の促進

老朽マンションの再生は、喫緊の重要課題です。再生にあたっては、区分所有者において、改修・建替えなどの再生方法を選択することになりますが、その過程に関しては、資金面・ノウハウ面での不安、区分所有者間での合意形成の困難性への懸念などが見受けられます。したがって、これらの懸念に対応して、改修・建替えなどに対する支援措置の充実を図っていくほか、区分所有者が容易に取り組むことができるよう、情報の提供やノウハウを有する専門家の関与による事業の実施、円滑な合意形成を可能とする制度や運用等について検討を行っていく必要があります。こうしたマンションの再生には、区分所有者や賃貸人などの協力を得ることが求められますが、地方公共団体においては地域の状況を踏まえて転出や仮移転をする居住者の居住の安定確保のため公共賃貸住宅の活用やその他多様な支援に努めることが求められます。

資金面については、区分所有者による負担を基本としつつも、居住者が安心して快適な生活を営む上で不可欠な基盤であることに配慮し、必要な助成のほか資金の確保について十分な支援措置が必要です。特に、計画の初期においては検討費用の確保が難しいことや、費用負担の困難な高齢者、低所得者なども存在することなどに配慮し、きめ細かな対策が必要です。 また、耐震性の劣っているマンションのほか、都市全体の居住環境に影響をおよぼすマンションや保安上危険または衛生上有害な状況にあるマンションについては、国および地方公共団体などによる積極的に改善が求められます。

このほか、大規模な団地における建替えや建築基準法上の既存不適格の解消など、マンション単体では解決が難しい問題については、国および地方公共団体による地域の実情に応じた適切な対策が必要です。既存不適格の問題については、これまでの事例においては、隣接地の取得やマンション建替えにおける総合設計制度の活用などによって対処していますが、従来の枠組みだけでは再生を図ることが困難な面もあり、多角的な視点から検討を進める必要があります。

このため、建替えに関する手続きの合理化を図る観点から、マンション円滑化法等について制度上隘路となっている問題の解消を図るなど適切な措置を講じていく必要があります。また、耐震性の低いマンションの建替えや被災したマンションの再建が円滑に進むための措置や団地における一括建替え、一部建替えや段階的な建替えを行いやすくするための方策等について、広く検討を行っていく必要があります。この際、多くの区分所有者が関係する老朽マンションの再生にあたっては、合意形成のための取引費用の軽減なども踏まえ、その仕組みや運用を考えていく必要があります。

むすび

マンションに関する施策は、マンションの着実な増加に伴い、今後ますます重要となっていくものと思われます。また、国土交通省のみならず、法務省その他の関係省庁、地方公共団体、管理組合、関係業界・団体などの多くの関係者・関係機関との連携の中で推進されなくてはなりません。あわせて、マンションに関する制度、支援策などは多岐にわたり、また複雑なものもあり、管理組合や区分所有者などに対して、分かりやすく広報を行っていく必要があります。

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執筆:秋瀬 翡翠(カワセミ)

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投稿者 sotodan : 2010年01月07日 12:52