Vol.0 改正省エネ法の概要:寄稿 秋瀬 翡翠(カワセミ)

はじめに

1997年京都で開催された「地球温暖化防止京都会議COP3」にて、日本は温室効果ガスの排出量を1990年比6%の削減を約束しました(第一約束期間2008年~2012年の平均)。これを達成するため日本政府は「京都議定書目標達成計画」(2005年4月閣議決定)を策定し、地球温暖化対策を推進してきました。2008年3月には、この目標達成計画を全面的に改定し、追加対策や新たな削減量を位置づけています。

昨年5月の省エネ法の改正(「エネルギー使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律」2008年法律第47号)は、特に増加傾向にある業務その他部門、家庭部門のエネルギー起源CO2の排出削減を強力に進め、新たな削減目標を達成するために策定されたものです。

そして関係する政令や告示も出そろい、ようやく今年4月1日にこの「改正省エネ法」は施行(一部は来年4月1日)されました。

今回の改正は、大きく分けて2つの対策の強化です。

  • 対策1.業務部門等に係る省エネルギー対策の強化
  • 対策2.住宅・建築物に係る省エネルギー対策の強化

対策1は経済産業省担当部分で、対策2は国土交通省担当部分です。

1. 対策1について

これまでの事業所単位のエネルギー管理の義務を①事業者単位(企業単位)に広げ、また②フランチャイズチェーンにも適用させるものです。

実際の施行は来年4月1日からですが、今年4月1日から1年間のエネルギー使用量を記録する必要があります。

①の事業者単位というのは、年間のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kL(3,600 kL)以上あれば、その使用量を企業単位で国へ届け出て特定事業者の指定を受け、定期報告書・中長期計画書の提出、エネルギー管理統括者等の選任など、企業全体としてのエネルギー管理体制を推進することが義務付けられます。

 
図-2 業務部門の対策強化 改正前-改正後

②のフランチャイズチェーンへの適用は、コンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーン店の場合、加盟店を含む企業全体の年間の合計エネルギー使用量が1,500kL以上であれば、フランチャイズチェーン本部がその合計エネルギー使用量を国へ届け出て、特定連鎖化事業者の指定を受け、同様に定期報告書・中長期計画書の提出、エネルギー管理統括者等の選任など、企業全体としてのエネルギー管理体制を推進することが義務付けられます。

大まかな流れと年間エネルギー使用量1,500kL以上となる事業者の目安は、以下の通りです。

 
図-3 業務部門等に係る省エネ対策の強化の大まかな流れと対象事業者の目安

2. 対策2について

これまでの「大規模な住宅・建築物(2,000m2以上)の建築をしようとする者等に対し、省エネルギーの取組に関する届出を提出する義務等」から、以下の6つの内容への改正です。

① 大規模な建築物(2,000m2以上)の省エネ措置が著しく不十分である場合の命令の 導入
*省エネ措置:建築物の外壁、窓等の断熱化、空気調和設備等の効率的な利用の ための措置
② 一定の中小規模の建築物(300m2以上)について、省エネ措置の届出等を義務付け
・新築・増改築時の省エネ措置の届出・維持保全状況の報告を義務付け、著しく不 十分な場合は勧告
③ 登録建築物調査機関による省エネ措置の維持保全状況に係る調査の制度化
・当該機関が省エネ措置の維持保全状況が判断基準に適合すると認めた特定建築物 の維持保全状況の報告を免除 等
④ 住宅を建築し販売する住宅供給事業者(住宅事業建築主)に対し、その新築する 特定住宅の省エネ性能の向上を促す措置の導入
・住宅事業建築主の判断基準の策定
・一定戸数以上を供給する住宅事業建築主について、特定住宅の性能の向上に係る国土交通大臣の勧告、公表、命令(罰則)の導入
⑤ 建築物の設計、施工を行う者に対し、省エネ性能向上および当該性能の表示に 関する国土交通大臣の指導・助言
⑥ 建築物の販売または賃貸の事業を行う者に対し、省エネ性能の表示による一般消費者への情報提供の努力義務を明示
*施行日は、2009年4月1日(ただし、②については2010年4月1日)。

3.対策2の各項目の概要

①大規模な建築物の省エネ措置が著しく不十分である場合の命令の導入

著しく不十分である場合とは、「エネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断基準」の住宅では1992年基準、非住宅では1993年基準を目安としています。

省エネ措置とは、具体的には以下の6つの項目に対する基準が設けられており、これらをクリアーしているかどうかが判断基準となっています。

  1. 建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止
  2. 空気調和設備に係るエネルギーの効率的利用
  3. 2以外の機械換気設備に係るエネルギーの効率的利用
  4. 照明設備に係るエネルギーの効率的利用
  5. 給湯設備に係るエネルギーの効率的利用
  6. 昇降機に係るエネルギーの効率的利用
②一定の中小規模の建築物(300m2以上)について、省エネ措置の届出等を義務付け

これについての施行は2010年4月からですが、これまでの2,000m2以上と比べ全国の年間届け出件数は、約6倍の5万件程度に増える見通しです。新たな対象建物としては、コンビニやスーパーなどが含まれることになります。

同様に、著しく不十分である場合とは、住宅では1992年基準、非住宅では1993年基準を目安で、省エネ措置の基準も①の1~6の6つの項目です。

住宅については届け出対象が拡大していますので、これまでの省エネ性能の判断基準を簡素化しています。また、2,000m2未満の非住宅の場合では、これまでのポイント法を簡略化した簡易ポイント法と呼ぶ評価法を新設しています。

③登録建築物調査機関による省エネ措置の維持保全状況に係る調査の制度化

建築時に省エネ措置を届け出た者は、当該省エネ措置の維持保全状況を所管行政庁に定期報告することが制度化されました。このための調査を「登録建築物調査機関」(登録申請等は近々行われる模様)に依頼し、省エネ措置の維持保全状況が判断基準に適合すると認められた場合は、当該維持保全状況の報告が免除される(登録建築物調査機関が行う)というものです。届出及び報告の流れは図-4参照。

④住宅を建築し販売する住宅供給事業者(住宅事業建築主)に対し、その新築する特定住宅の省エネ性能の向上を促す措置の導入

これは経済産業省が行っている「省エネ家電のトップランナー方式」を国土交通省が「建売住宅」に対して行おうとするものです。

年間150戸以上の建売住宅を販売する事業者に対して、まずは2013年時点での建売戸建住宅の省エネ性能の目標性能を定め、達成できなかった場合は勧告・公表、命令、罰金(100万円以下)を科すというものです。具体的な対象は、住宅メーカーやパワービルダーと呼ばれる会社で、全国で約100社程度となります。

目標性能としては、1999年の省エネ基準を満たす窓や外壁を持つ住宅に一般的な設備を導入した場合の一次エネルギー(注1)消費量の約90%の水準を設定しています。

注1. 基本的に自然界に存在するままの形でエネルギー源として利用されているもので、石油・石炭・天然ガス等の化石燃料、原子力の燃料であるウラン、水力・太陽・地熱等の自然エネルギー等自然から直接得られるエネルギーのことです。

これに対し、電気・ガソリン・都市ガス等、一次エネルギーを変換や加工して得られるエネルギーのことを二次エネルギーといいます。

通常、原油換算万トン、万キロリットル(万kL)として表示されます。

評価対象建物の一次エネルギー消費量は、インターネットにて無償で使えるソフトや早見表があり、これを使って簡易に計算することができます。

⑤建築物の設計、施工を行う者に対し、省エネ性能向上および当該性能の表示に 関する国土交通大臣の指導・助言

これは、改正省エネ法に適合する建築物を担保するために、必要がある場合には、設計または施工を行う者に対して改正省エネ法に適合するように指導・助言ができるというものです。

⑥建築物の販売または賃貸の事業を行う者に対し、省エネ性能の表示による一般消費者への情報提供の努力義務を明示

これは④のトップランナー方式の一貫として、住宅事業建築主(年間150戸以上の建売住宅を販売する事業者)に対し、省エネ性能の表示を義務付けたもので、以下の内容を表示することを科しています。

(1) 表示事項

住宅の「外壁、窓等を通しての熱の損失の防止」及び「空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のために特定住宅(一戸建て住宅)に必要とされる性能」の表示を行う場合には、次に定める事項を表示すること。

  1. 住宅における一次エネルギー消費量が住宅事業建築主の判断の基準に規定する基準一次エネルギー消費量以下となるときは、その旨。
  2. 住宅の断熱措置が、住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準又は住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針に相当するときは、その旨。

以上の内容の表示事項については、ラベルの住宅本体への貼付もしくは刻印または広告、パンフレットその他の住宅とラベルとの対応関係が明らかな印刷物への印刷により、見やすい箇所に表示することとされています。

改正省エネ法の概要については以上です。今回の省エネ法の改正は、かなり踏み込んだ内容となっています。これまで対象とならなかった企業や建物が該当してきますので、関係する業界での混乱が予想されます。ただし、対策2の「住宅・建築物に係る省エネルギー対策の強化」については、省エネ基準が住宅では1992年基準、非住宅では1993年基準を目安としていることや、建売住宅のトップランナー方式の目標性能が1999年の省エネ基準となっていることなど、基準そのものが先進諸国(EUなど)の基準からかなり下回ったものに留まっています。

現在、京都議定書第一約束期間(2008年~2012年)の温室効果ガス削減量1990年比6%が達成できるかどうかも危ぶまれていますし、この後の第二次約束期間での削減目標(20%削減?)などを考えた場合、省エネ基準そのものの引き上げが急務だと思います。

執筆:秋瀬 翡翠(カワセミ)

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投稿者 sotodan : 2009年06月29日 16:57