外断熱のEN(欧州規格)とISO(国際規格)化について
事務局次長 田村 浩一
外断熱はドイツで発達し、多くのDIN(ドイツ規格)規格が存在する。EU(欧州連合ドイツ フランス スウェーデンなど27の国が加盟)の出現によりDINをたたき台にして外断熱のEN(欧州規格)が出現した。ウイーン協定により本来ENとISOは同時に協議されたが、外断熱はその協議から外された。ドイツの外断熱関連の専門家はDINがENになればそれでよし、と考えておりグローバルな視点がない。
日本では外断熱関連企業は多くあるがJISもなく個々の企業が個々の社内規格で仕事をしている。この現実を見るとき、ENに決められた外断熱に関する規格をISO化することは今日本で通用している材料、工法を世界基準に持ち上げることで、将来の外断熱業界にとって重要な仕事であると認識している。
もう少し、その必要性を挙げると
- 日本では住宅が高気密化し、室内が高湿度になった結果、カビやダニの被害が増大している現状がある。
- さらに、カビやダニによるアレルギー疾患が子供や老人の体を蝕んでしる。
- 外断熱はカビやダニ生息の原因となる壁体内の高湿、結露を防ぐ有効な手段と言える。
- 我が国ではRC建物の断熱は内断熱から発達し、外断熱に対する理解がまだまだ薄い。
- 消費者の選択肢を広げるためにも、外断熱を含む様々な工法が広がることが望ましい。
などとなろうか。
それでは、現在、外断熱に関するEN規格はどんなものがあるか。DIN ENの番号と項目は次の 9項目である。
- DIN EN13162(2001) 建築用断熱材―工場生産による鉱物繊維ウールの特性
- DIN EN13165(2001) 建築用断熱材―工場生産による硬質発泡ウレタンの特性
- DIN EN13171(2001) 建築用断熱材―工場生産による木毛繊維の特性
- DIN EN13500(2003) 建築用断熱材―鉱物ウールによる通気層の無い外断熱システムの特性
- DIN EN13495(2002) 建築用断熱材―発泡法による通気層の無い外断熱システムの特性
- DIN EN13496(2002) 建築用断熱材―グラスファイバーメッシュの機械的特性の決定
- DIN EN13497(2002) 建築用断熱材―通気層の無い外断熱システムの衝撃強度の決定
- DIN EN13494(2002) 建築用断熱材―断熱材の接着剤及びベースコートの接着強度の決定
- DIN EN14318(2002) 建築用断熱材―現場発泡ポリウレタンフォーム(PUR) Part2 断熱材設置のための仕様
以上の項目についてお茶の水女子大学名誉教授 田中辰明先生が委員長となり、平成19年7月に「外断熱のENのISO化の検討」というWG(ワーキンググループ)が設立された。
(WG構成委員 委員長 田中先生 建材試験センター 業界3社 NPO法人外断熱推進会議) このときの田中委員長の思いは下記の通りであります。
地球温暖化防止・省エネ・住環境の向上を考えた住宅・建築物の断熱材及び断熱工法を推進する観点から、欧米において実績のある外断熱工法(注1)を広く世界共通の断熱工法として採用し、現在、世界共通の深刻な問題である地球環境問題解決の一助とすることを目的に、現在規格化されているEN規格をISO規格として標準化することをこのWGの目的とし、上記の8規格について、ISOの規格としての適否、問題点や対策について調査検討して、ついでJIS規格とする場合の適否、問題点や対策についても調査検討して整理報告することをWGの仕事の内容とする。期間は平成19年8月から平成21年3月末までの2年間とする。
その後、第1回のWGが開催されまず、 EN13495(2002) 建築用断熱材―発泡法による通気層の無い外断熱システムの特性) EN13500(2002) 建築用断熱製品―鉱物ウールによる通気層の無い外断熱システムの特性 の2件について調査検討することになり数回のWGの結果、平成20年5月に「外断熱関係のEN規格のISO化に関する調査検討報告」(内容省略)としてWGのまとめが完成した。(編集事務局保温保冷工業会専務理事 櫻井誠二)
次の検討項目は EN13498(2002) 建築用断熱製品―外断熱複合システム(ETICS)(注2)の貫通抵抗測定 EN13499(2003) 建築用断熱製品―発泡ポリスチレンに基づく外断熱複合システム(ETICS)仕様 の2件に決定され平成21年1月の段階でほぼ調査と検討が終った。
この間田中先生は南京での国際会議で検討結果を報告したり直接DIN事務局を訪問しロビー 活動に努められた。
その結果次の3件がDISとして承認された。
3件とは ISO/DIS 29803 とISO/DIS 29804とISO/DIS 29805である。各々 EN13497(2002) 建築用断熱材―通気層の無い外断熱システムの衝撃強度の決定 EN13494(2002) 建築用断熱材―断熱材の接着剤及びベースコートの接着強度の決定 EN13496(2002) 建築用断熱材―グラスファイバーメッシュの機械的特性の決定 に相当する。
ここでISOについて少し復習します。
ISOは(International Organization for Standardization 国際標準化機構)は物質及びサービスの国際交換を容易にし、知的、科学的、技術的、及び経済的活動分野の協力を助長させるために世界的な標準化及びその関連活動の発展開発を図ること。を目標に1947年2月23日に発足した。2007年12月での会員は157ケ国である。
貿易障害や内外価格差等の外圧が日本に対して強まっている昨今、日本独自の規格に留まることなく、ISO規格制定への積極的な参加が諸外国から期待されている。しかしながら、ヨーロッパの各国に比べて日本はISOとの整合化率が低いのが現状である。
実際の規格を検討するのは専門委員会(Technical Committee TC)でその下部組織に分科委員会(Sub Committee SC)及び作業グループ部会(Working Group WG)がある。 各TCの審議はJISC(日本工業標準調査会)の委託を受けた国内審議団体(断熱関係は建材試験センター)が行っている。日本で動いているTCの中にTC163がありこれが断熱関連の専門員会である。国際規格にまで至るには
0.予備段階(PWI) 1.提案段階(NP) 2.作成段階(WG) 3.委員会段階(CD)
4.照会段階(DIS) 5.承認段階(FDIS) 6.発行段階 (IS) の7段階がある。
今回の3件はDISつまり、4.照会段階(DIS)、つまり、国際規格案(Draft International Standard DIS)として承認されたことになる。承認の方法は各国が1票の権利を持つ投票方式で行われる。
通常はこのまま最終投票にかけられ発行段階 (IS)になります。
いままで官庁も含め外断熱に関して理解が不足しているために建設が困難であった状況がDISの段階になったことにより国際的に認められたということで、その意義は大きい。田中先生が委員長を勤める日本のWGはこれからも継続検討しISO化への作業をしていく。
日本には外断熱工法として乾式、湿式など、また断熱材も発泡系、繊維系とあり業界としての一本とはいいがたい。しかし、世界の潮流は日本のレベルを超えていくかもしれない。世界の技術レベルに注目しつつこのWGが実績を挙げて行く仕事に期待していただきたい。
更に言うなら日本発の外断熱に関する規格を提案することも視野に入れたい。
(注1) ドイツでは通気層のある外断熱を「背面通気断熱システム」通気層のない外断熱を「複合断熱システム WDVS」と呼んでいる。アメリカでは外断熱を指す言葉としてEIFS(外断熱及び仕上げシステム)があり、通常は「湿式外断熱工法」と訳されます。また、関連業界団体としてEIMA(EIFS工業会)が組織されており材料メーカー、ディストリビューター、請負業者、建築家、供給会社など300社以上が加盟しており関連業界挙げて品質確保を目指しています。
(注2) ETICSとはヨーロッパで使用される言葉でドイツのWDVS(「複合断熱システム)と同義語です。
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投稿者 sotodan : 2009年04月10日 15:51
