法人化3年に想う 宮坂幸伸
専務理事 宮坂幸伸早いもので外断熱推進会議が特定非営利法人格を取得してから3年近い時が過ぎた。
私が最初に「外断熱」に接したのは、6年前だったと思う。東条会館で行われた外断熱セミナーに参加した時だった。外断熱という聞き慣れない言葉が新鮮だったのを記憶している。そしてこの工法の普及を図らねば、と確信したのはその翌年の秋も深まった頃、札幌の外断熱マンションの施行現場を訪ねた時である。九割方は完成していてモデルルームへ入り、小さな電気温熱機一台で70平米を超えるスペースが何とも暖かく心地良かったのである。外では吐く息が白々としているような気温の中である。これは理屈では判っていても実感してみて「眼から鱗」という想いでもあった。
当時は省エネ総研の江本社長、堀内部長(現推進会議事務局長)と共に外断熱工法の普及を図ろうと、内閣への質問主意書の作成、国土交通省への申し入れの機会を設けたりする活動をしていたが、行政の動きは鈍かった。環境省、経済産業省(資源エネルギー庁)等は比較的この外断熱の環境や省資源への効用を素直に受け容れる素地があったが、主管官庁である国土交通省、とりわけ住宅生産課は言を左右して「良いものであってもコスト等を勘案して最終的には消費者が決めるもの」との論で全体としては積極的に政策誘導を図ろうとはしなかった。
私自身は一貫して「より良いものを知ってしまった者の行動責任を重視すべき」と考えていた。様々な抵抗があったが一貫して「国鉄民営化」の論陣を張ったのも同じことであった。ドイツの省エネ政令ではないが、国土交通省の姿勢を見て政策誘導の必要性を改めて痛感した。そしてそれがNPO設立構想へと繋がったのだった。勿論その後の議連の結成もこの延長上にある。
ご承知のように、行政は縦割りであり、省益が優先するというのが現実である。こうした仕組み、現実を克服して、RC躯体の建築にあって多くの優位性を持つ外断熱工法を推進していくには非営利、特定の組織などに属しないNPO法人という形態が最も良いと考えたのである。
幸い多くの方々の共感を得ることが出来た。当初は任意団体としてスタートしたが、その時から堀内氏が構想し実施されたドイツ・スウエーデン外断熱視察の旅の試みは、とりわけ建築、そして建材メーカーに関わる参加者に外断熱についてのある種の確信をもってもらうことに寄与したのではないかと思う。団長として3回参加して実感したことである。これにセミナーなどの実施が加わり、法人化後の活動の芽はこの時に生れたといって良い。任意団体から法人へ、核となる素晴らしい方々に恵まれて、法人化は順調に進んだのである。
生来の暢気なというか楽観的な性格からか、法人化にあわせ、私自身もそれ迄の仕事を辞めこの運動に打ち込むこととした。この活動を通して環境問題への一つの挑戦をしたいというささやかな想いもあった。勿論素晴らしい多くの仲間と新しい課題に一緒に挑戦していくという愉しみもあった。初めて味わう辛さも、時には葛藤もあるが、夢を大きく持ち進んで行きたいと思っている。
さて、3年を振り返ってみると建設的な意味での問題も明らかになったといえよう。敢えて簡易にいえば外断熱工法は、設定された室内温度へのRC躯体の安定的な蓄熱性に多くを委ねている。外側に充分な断熱を施すのもこの蓄熱性に外気の影響を与えない為である(開口部、熱橋問題も同じ事である)。そしてこれが「外断熱はRC躯体のもの」という主張の所以である。そして外断熱を推進する為に“環境”、“省エネ・省資源”に貢献するという問題意識を併せて持っている。しかし他方、人が住む場所は必ずしもRC躯体に限った訳ではなく木造住宅もある。この省エネという京都議定書にも掲げられたCO2削減目標を木造住宅にも援用する際、だからといって木造を否定し、RC躯体の外断熱でなければならないとは言えない。また日本の風土に根ざした住宅の伝統もある。我々はRC躯体へは外断熱こそがベストである、という立場をベースとしながらも、それ以外の例えば木造住宅における省エネ、快適な室内環境に着目した断熱の必要性、効果も我々の運動の中に然るべき場所を用意しなければならないのである。しかもそれはなし崩し的ではなく、主体性を持って先験的に主張しなければならない。
また、日本独自の伝統は絶対に無視することは出来ない。これは日本の風土、伝統に根ざし、吉田兼好ではないが日本の多くの地域では夏に重きを置いた伝統的住居があり、それは尊重すべきことである。我々は、単に「彼の国で」ということではなく、こうした国土の大半を温帯モンスーン地域に置く中での外断熱、断熱について“日本”を踏まえた新たな提案をしていくという責務もあるのである。
私自身は「環境」を切り口として、先ず外断熱が最も有効なものについてはこの採用を拡げていくべきだと考えている。省エネ、省資源、健康、快適な住空間の実現を、そして新たな街の景観造りといったジャンルへ拡げて行くべきだと思う。同時にこのことが戦後の我が国の、住宅も消費材とするが如き住宅政策の見直し、業界の在り方の転換に繋がってくれればと思っている。
ともあれ、この外断熱推進会議が進めているのは外断熱を普及定着・拡大するという“運動”である。人(ひと)、環境に常に想いを馳せ、出来るだけ多くの意見や立場を受け容れ、忖度して運動の輪を拡げていきたいと思う。
今日まで外断熱推進会議にご支援を頂いた皆様方に衷心よりの感謝を申し上げます。
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投稿者 sotodan : 2005年09月01日 01:48
