第6回 ハンス・エーク日本セミナーを終えて 宮坂 幸伸
ハンス・エーク日本セミナーが終えた。2月23日の長野市を皮切りに東京、京都、札幌と回ったが、いずれの地でも会場を埋め尽くす参加者が最後まで真剣に参加していたことが強い印象となって残っている。

司会宮坂
私は今回のセミナーの各会場での冒頭、「今回のセミナーを通して断熱の必要性、その持つ意味をしっかり感じて欲しい。その集大成がハンス氏の無暖房住宅」といったことを述べた。セミナーを終えると同時に次々と問い合わせが殺到している状況を見ると、大方の参加者の皆さん方には濃淡はあろうが、今回のセミナーの趣旨はご理解をいただけたのではないかと思う。

長野会場
ハンス・エーク氏の無暖房住宅は木造建築であるが、断熱材の厚さに対する日本の建築関係者の関心が薄い中で、建築物理に裏打ちされた断熱材の厚さによる断熱性能の高さが木造住宅であっても無暖房住宅とすることを(高気密、高性能サッシ、熱交換換気をともなって)可能としたというハンス氏の実証に裏打ちされた話しは、断熱材の厚さの意味を再確認させたことだろう。断熱材はその機能を十分に発揮出来て初めて「断熱材」であるということである。
問題は木造建築の場合、断熱材の厚さ、ヒートブリッジの問題、開口部の問題など、RC躯体に対する処理と工法との共通の問題、認識すべき点は多く、また環境、省エネの視点など共通の思想に立つものであることは間違いないが、気温、湿度、日照時間など地域差による建築にあたっての工法の多様性がある
ことである。この点は同じ高断熱による建築の普及を目指すものとして留意しておく必要があるだろう。

東京会場
私たちが推進している外断熱工法は、基本的にはRC躯体に対するものである。外気温を躯体の外側に貼った断熱材によって遮断することによって、RC躯体の持つ蓄熱性が室内温度に同調することで一度設定された快適な室内温環境は、その蓄熱性故に特段の冷・暖房エネルギーを付加することなく保持され、更に室内温と躯体温の同調は結露の発生を抑制することに着目した工法であることは既に皆様がご承知の通りである。建物の高耐久性などその特質は多々あるがここでは割愛する。
ヨーロッパで外断熱工法が新築、改修を問わず主流であるのは、元々が石造り、レンガ造りの建物が多くあったからである。外側に貼られるレンガには断熱性もあった。そうした歴史の上に立って、北欧、ドイツでこの工法が先行したのは環境・省エネへの関心の高さからである。
わが国は元々木造造りの文化であった。夏の高温多湿な気候風土に対応することが先ず主眼であった。萱葺き屋根や蔵造りなどの断熱効果のあるものも部分的であった。冬は一部屋に家族が集い暖をとるのが一般的であった。それはそれで良いのである。ヒートショックの問題など多くの欠点はあるが、それは日本の伝統的建築文化であったのだ。

京都会場

京都町屋
問題はRC躯体の建築が主体となってきた中でその建築に最も相応しい工法が採られなかったことである。何度も繰り返し言ってきたことだが、知ってしまった者の責任があるにも拘わらず果たされていないのである。殆どの集合住宅で結露が問題になっているのはその典型である。ハンス・エーク氏は「(建物の)歴史を切ってはいけない」と言われた。京都の町家を訪ねた時のことである。それは日本の伝統的家屋についてのことである。しかし現在我々は、RC躯体の断熱効果が求められ、気密性の高い建物という、伝統に照らせば新しい工法の中にいるのだ。ハンス・エーク氏の無暖房住宅から改めて何を学ぶべきか、再認識すべきかが問われている。

札幌会場
ともあれ今回のセミナーは、建築工法という垣根を超えて環境問題の視点から各界の指導者が、無暖房住宅という極限の住宅を切り口として、外断熱工法の必要性について影響力を発揮していく燭光が見えたという意味でも大変有意義であったと思う。セミナーの開催にあたって、多くの方々、企業からご支援を頂いたことに感謝を申し上げる。
宮坂 幸伸
NPO外断熱推進会議 専務理事
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投稿者 sotodan : 2005年08月12日 04:41
