第3回 「憲法と外断熱」 竹川 忠芳
外断熱に興味をお持ちの皆さん、外断熱の良さに薄々気がついてこのホームページに見入っている皆さん、 皆さんにお話ししたいことがあります。このような皆さんにとってこそ、"外断熱"問題とは、まさに憲法問題 であることを知っていただきたいのです。
まず、外断熱の良さを確認しておきましょう。 1つ目は、耐久性の点です。鉄筋コンクリートの建物を外断熱にしたとき、内断熱に比して建物の耐久性が 格段に増大します。なぜなら、建物外部からの熱さを鉄筋コンクリートがまともに受けず、外側にある断熱材 がこれを遮断してくれるため、朝昼の、そして夏冬の温度変化を鉄筋コンクリートがまともに受けなくなるか らです。そして、建物の耐久性が増せば、当然に建物の資産価値が増えます。
2つ目は、結露が発生しにくい点です。建築物理の観点からすると、内断熱の場合にはほとんど結露します が、外断熱の場合は結露しにくいとされています。そして、結露は、カビ・ダニの繁殖する原因となり、アレ ルギー疾患をおこすことが知られています。まさに、シックハウスとなるわけです。これを防止できるのは外 断熱しかありません。
3つ目は、省エネ効果としての有効性において、外断熱の方が内断熱に比して格段に優れている点です。外 断熱ではコンクリートの蓄熱性能を活用できるからで、室内の快適温度を持続することが可能です。 外断熱のこれら3つの利点については、建築の専門家あるいは建築物理の研究者の間で議論がされており、 このホームページでも紹介されると思いますので、詳しくはそちらに譲ります。
ところで、これ程に利点を有する外断熱の建物が普及しないのは何故でしょうか。また、知りたいと思って このホームページを開いた皆様ユーザーの方々が、外断熱の建物を手に入れたいと思っても難しいのは何故で しょうか。それは、外断熱にするか内断熱で施工するかを決めているのが皆様方ユーザーではなく、建築施工 業者であったり、行政であったりするからです。しかし、建物を所有したり、建物を利用したりして、長期に わたってこの"建物"と関わるのは皆様ユーザーの方々であって、建築施工業者は建築工事期間中のわずかな期 間しか関わりません。また、行政とて同様です。にもかかわらず、建築施工業者や行政の側の事情から、現在 の鉄筋コンクリの建物のほとんどは内断熱の方法で建てられてしまうのはおかしくないでしょうか。いわゆる ユーザーの立場からみて、欠点の多い内断熱よりも利点の多い外断熱による建物を所有し住みたいと希望して も、現実にはこれに応えてくれる体制となっていないのはおかしくないでしょうか。
結局、今の日本社会では、建築物を一方的に供給する建築会社と、一方的に与えられる消費者(施主)側と に大きく二分され、消費者(施主)側が望んでも、建築会社側がこれを作らなければ、世の中にそのような外 断熱の建物は出現してこないという大きな構図が出来上がっているのです。 この状況をそのまま認めてよいのでしょうか。これだけ利点のある外断熱を消極的なやり方にせよ、国や施 工会社側が妨害していることになるのではないでしょうか。このような現状を打破するために、消費者(施 主)の側にも外断熱の建物を施工するように求める何らかの"権利"があると言えるべきではないでしょうか。 これが、外断熱を憲法問題とする契機です。
こう考えたとき、実は日本国憲法には、いくつもの規定が用意されていることが分かります。
1つには、憲法25条の規定です。この規定は、生存権に関する規定と言われております。しかし、条文を 読む限りここには"生存"と記載されているわけではなく、もっと広く「・・・健康で文化的な最低限度の生活 を営む権利を有する」と記されております。そして「生活」という概念は、「生存する」ための経済的「生 活」だけを意味するのではなく、人間のあらゆる営みの場を意味する言葉であり、生活環境をも含む広い概念 です。従って、環境権なども憲法25条を根拠にして主張されております。だとしたら、建物の外の「環境」 だけでなく、建物の中の「居住の快適性」も含むはずで、外断熱による建物を建てるよう求める権利があると 言ってもおかしくないと思います。特に、内断熱は結露を生じ、カビ・ダニの温床となり、ぜん息やアレルギ ー疾患をおこしやすいが、外断熱にすれば結露が生ぜず、このようなカビ・ダニによるアレルギー疾患がおこ りにくいということになれば、このような快適な「生活」を求める権利が憲法25条により保障されていると 言ってよいのではないでしょうか。
2つ目には、憲法13条後段です。ここには「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公 共の福祉に反しない限り、立法その他の国政のうえで最大の尊重を必要とする」と定められております。一般 にこの規定は、幸福追求権と総称され、新しい人権の根拠規定とされるもので、プライバシーの権利や環境権 の根拠とされる規定です。だとすれば、このような「快適な居住空間」を求めるため、外断熱で建築するよう 求める権利が幸福追求権の一つとして存在するとしておかしくないのではないでしょうか。
3つ目は憲法98条Ⅱ項です。ここには「日本国が締結した条約及び確立された国際法規はこれを誠実に遵 守することを必要とする」と定められております。ご記憶のとおり、1997年12月に、京都で地球温暖化 防止のための国際会議が開催され、温室効果ガスの排出を削減する旨の京都議定書が調印されました。日本 は、2008年〜2012年にかけて、1990年比で6%の削減を約束しておりますが、現実にはその対応 策が遅々として進んでいないのが現実です。しかし、外断熱の利点の3つ目として述べたように、外断熱にす れば、この点でも効果は大であり、即刻、これを実行して、外断熱の建物がほとんどであるという日本にしな ければならないと言えます。 以上、外断熱の建物を求めたいと考える皆様の要求は、単なる個人的な欲求のレベルを越えて、憲法上の権 利であることを、あえて指摘した次第であります。
そして、このような憲法上の権利と言える外断熱工法を正しく普及すべく、我々はNPO外断熱推進会議を 設立いたしました。 是非とも、皆様の多数の方々の参加をお待ちしております。
※この「オピニオン」は2002年12月19日の外断熱推進会議発足準備会の記念講演「憲法と外断熱」をもとに、講演者 本人が改めて書いたものです。
竹川忠芳
弁護士、NPO外断熱推進会議代表
平成8年度第一東京弁護士会監事、その他、消費者委員会、業務妨害対策委 員会、倒産法部会に所属し、建築紛争研究班の班長などを行なっている。
弁護士業務としては、一般民事、刑事などの全ての事件を取り扱うが、何年か前から欠陥住宅訴訟に取り組んで今日に至る。
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投稿者 sotodan : 2005年08月12日 04:39
