「今川祐二のハンス・エーク同行記」第4回 長野セミナー(長野市メルパルク長野)

2月23日(水)午前

札幌を離れて4日目になるが、本州はつくづく寒いと思った。
これは、建物内の話で、暖房と断熱の違いだと思うが、よくこちらの人は、耐えているなといった感想だ。
たぶんハンス氏もこんな感じを懐いているだろう。

昨夜は、風邪ぎみで布団を2重にして寝たが、堀内さんのイビキと宮坂さんの一人説教(寝言)で、何回か目がさめた。
スウェーデン視察の際SASの機内でもらった耳栓をして寝たのだが、豪快な騒音では効果は薄かった。

ホテルの朝は寒かった。
泊まった松籟荘は昭和14年(1939年)に完成した木造数寄屋造建物だから、開放的な建具の造りや断熱材があまり入ってないのだろう。
朝食は昨夜の大広間で食べた。


朝食を摂るハンス氏

ハンス氏は正装して、席についていた。
日本で第一回目の講演の日、そんな意気込みを感じた。

ハンス氏は、朝食が終わると出発の時間を聞き、それまでの間、ホテル内を撮影したいと荷物をまとめロビーに向かった。
このホテルには、いろいろお宝的な物があり、撮影にはもってこいの所の様だ。

堀内事務局長は、出発間際まで講演で使うパワーポイントを再確認していた。人知れず準備する姿に、講演の成功を感じた。

旅館を出発し開場のメルパルク長野に向かう。


旅館前で

車中で、
ハンス『家の換気排気口が屋根から出ていなが?』
換気は、第三種換気方式が最近の法律関係で採用が増えているが、まだ数は少なく、開放的な壁付きプラスチックの現状を説明。

ハンス『こちらの暖房は昨日の家電品店のものか?』
そうです。
室内拡散方式の石油ストーブが主流です。セントラルヒーティングは北海道でも、新築物件でようやく70〜80%の普及です。

ハンス『断熱厚さはどの位なのか?』
壁内100もあるが、数は少ない様です。北海道でも、100以上となるとあまり採用されていません。

バスの中でこんなやり取りがあった。

長野セミナー 第一部

長野市内を通り長野駅前の開場に到着した。
ハンス氏は、早速パネリストとの打ち合わせを行う。ロビーに出ると、受付付近が大変混雑している。
信越支部が、地元新聞やテレビ等でセミナー報道をおこなった効果のようだ。


会場の受付風景


打合せ中のハンス氏と友子さん


講演前のハンス氏と友子さん

平日にも関わらず、大勢の傍聴者が来た。
準備していた椅子もたりず、補助椅子を用意する状態だった。
予定定員300名のところ400名が入った。


入場者は大幅に予定を越えた

宮坂専務理事の司会で講演内容が始まった。

始めに『地球環境と外断熱』と題し、NPO外断熱推進会議事務局長堀内正純氏が講演し、無暖房住宅と外断熱は、温室効果ガスの抑制、環境共生の時代に、同じ立場にたった必然的な行動原理である事。
日本でこそ省エネルギーを意識した取り組みが早急に必要なことを述べた。

次に、『地球環境と無暖房住宅〜エネルギーを使わない暮らし』と題し、無暖房住宅設計者・建築家ハンス・エーク氏(通訳 友子ハンソン)が講演した。


講演中のハンス氏


講演中のハンス氏

自分で描いたイラスト画で家族を紹介した後、地球上の生命体が生きている生存圏は、りんごで言うと皮と同じ薄いエリアで、あること。
1974年仲間と始めたE5(エーファイブ)と言う設計事務所で、最初に依頼を受けて取組んだ仕事は、いろいろな知恵と工夫を駆使したソーラーハウス住宅の設計だったが、そのほとんど省エネ機能が計画通り動かず、大失敗して挫折したこと。
そして、その建て主からの励ましで立ち直り、シンプルな機能こそが重要だと気づき取組んだパッシブソーラーハウス。
その成功が、後のドイツ共同設計によるさらに進んだパッシブ
ソーラーハウスにつながったこと。
そして、視野に入ってきた無暖房住宅への挑戦と話は進んで行く。

無暖房住宅についてのコメントをまとめる。
熱の移動には、
換気(気密含む)による熱の移動
床、壁、天井面、窓、外ドアからの熱伝導による熱の移動
排水による熱の移動
以上3つがある。
それらを最小限に留め、太陽熱の夏冬を考えた取り入れと、熱回収を高度にした換気装置を採用した。
断熱材は、天井500、壁430、床は土間下に300入れている。
熱交換換気は,居間と寝室へ新鮮空気を給気し,排気はトイレ・洗面所からおこなっている。
ドアのアンダーカットを通って各室に流れる。
熱源は、太陽熱、人体熱、家電製品からの熱でまかなう。
室内温度は平均20℃である。
2002年年末に大寒波が襲った時も、心配せて無暖房住宅の測定会社に電話で状況を問い合わせたところ、年末で大勢の家族が居たり、キャンドルを沢山つけていたので、室内温度が30℃にもなって大変な状況だと知らされた。
またあるお宅は、冬季不在になる3〜4日の観葉植物の心配で、電気ストーブをつけっぱなしで出掛け、帰って見ると40℃の室内温度ですべて枯れてしまった。
これは、如何に熱が外部に漏れないかを、如実に表している。

コストについては、断熱材、熱交換気、窓のグレードアップに、4万〜5万スウェーデンクローネ掛かったが、普通の住宅にあるセントラルヒーティング設備が同じ位の値段なので差し引きで、住宅建設コストのアップは無いと試算している。
今回は木造住宅の無暖房化だったが、高層鉄筋コンクリート造にも勿論採用できる。
スコットランドでは、7階建ての無暖房マンションを建設した。

これから、スウェーデンのアリングソースにある、1960〜1970年代に建てられた鉄筋コンクリート造の断熱改修に当たる。
このプロジェクトでは、断熱と窓の性能をアップするだけで、現在の住宅性能を3倍に改善できる。
断熱の効用と、外断熱の有効性は、今後の住宅改修に欠かせない。

持続可能な社会をテーマにした、イエテボリ2050をコーディネートしている。
持続可能な社会とは、
気候が安定していること。
循環型社会であること。
公平、平等であること。
生物体系が多様であること。
以上が重要なことだ。
化石燃料はいつか枯渇する。その時期を遅らせる為にも、私のプロジェクトは意義がある。

以上の様な講演内容でした。

長野セミナー 第二部

休憩をはさみ、パネルディスカッションとなった。
出席者は
   ハンス・エーク氏(無暖房住宅設計者)
   友子・ハンソン氏(作家・スウェーデン在住)
   山下 恭弘 氏 (信州大学工学部教授)
   茅野  實 氏 ((社)長野県環境保全協会会長)
   堀内 正純 氏 (NPO法人 外断熱推進会議事務局長)
で進められた。


パネルディスカッションの様子

最初に、
友子・ハンソン氏が
イエテボリの紹介と、スウェーデン人が人生で大切にするものは、
家   
バカンス
車   であること。
有限の資源(石油など)は、今後埋蔵量が少なくなるにつれ、高騰し,人口の1/3位の特権階級しか買えなくなると、スウェーデン人は認識している。
私達は、現在の資源を子孫に引き継ぐキーパーソンにすぎない。
と話す。


講演中の友子・ハンソン氏

続いて、
山下 恭弘氏は、
海外視察から、EU諸国の取り組み、取分け外断熱で150厚の断熱使用は、事実なこと。住宅の転換期である。
循環型社会にあった住宅造りを行ない、外断熱の有効性を考え、無暖房住宅のできる現実を直視すべき。と話す。


山下 恭弘教授

茅野  實氏は、
どうせ建てるなら、良い建物を造ってほしい。銀行も外断熱建物には、優遇貸し出しを行うべきだ。
省エネ効果、温室効果ガスの減少に外断熱は有効であることを認識した。


茅野 實会長

堀内 正純氏は、
外断熱の名前ばかりが先行してはならない。
過去にあった外断熱ブームの失敗を繰り返してはならない。
しっかりとした、断熱と窓などを含めた外断熱を行ってほしい。

ハンス・エーク氏は、
家に煙突がなぜ無いのか。換気方式も気になる。
たぶん長野の家は、冬の室内温度確保には、大きなエネルギーが必要だろう。夏もエアコンで、大きなエネルギーがいるだろう。
いま住んでいる家に断熱改修しても、10〜15年で元が取れるだろう。
結果なによりも、室内気候が良くなり、快適になり、健康的だ。
お金で買えないものだと考える。

山下 恭弘氏は、
過去の外断熱の歴史は、負の歴史だ。これからは、改める必要があると考える。
造る側が、今まで試みてきた内断熱から外断熱への転換説明が付かないのか?
エネルギーロスが許されない時代に入り断熱改修などは必要だ。

茅野  實氏は、
24時間営業も、人間は夜寝るものであり、必要を疑問視する。
自動販売機1台と一件の家屋の消費する電力は同じだ。

山下 恭弘氏は、
木造は27〜28年で、鉄筋コンクリートは35〜40年で壊されていることは許されないことだ。
以上の意見が出された。


長野セミナー 質疑応答

続いて、質疑に入った。(回答はハンス・エーク氏)
Q−1 無暖房住宅の内部温度と湿度ははどの位か?
A−1 22〜23℃で推移している。
   湿度は冬場20〜30%、夏場50〜70%位だ。

Q−2 無暖房住宅述べ床120の換気量は?
A−2 0.5回/hです。これは、スウェーデンの建築基準です。

Q−3 建築コストにそれだけ投資して、回収には何年もかかるのでは?
A−3 あなたは、現在のエネルギーコストが未来も同じと考えるのか。例えば、アジアの人々が日本と同じ生活をすると、石油はたちまち不足する。快適性は値段では試算できない。スウェーデンで調査したところ、普通の住宅(壁断熱厚さ170)とパッシブソーラーハウス(断熱厚さ430)の住宅建設コストは、パッシブソーラーハウス方が、20%安くなった。
   これは、エアコンや暖房装置などが不要なため、普通の住宅より結果安く成ったのだ。
   無暖房住宅が高くなることは無い。

Q−4 私は軽井沢で、住宅の測定をしているが、信州の断熱材は何が相応しいか?
A−4 信州の状況がわからないので、答えられないが、無暖房住宅は無人で+14℃以下には下がらなかった。
   ただし、冷蔵庫と熱交換換気扇は可動していた。
   熱交換換気扇も止めた状態では、+10℃だ。
   無暖房住宅の断熱材は、ミネラルウール、EPS、グラスファイバー、木屑と紙を砕いた断熱材などを併用した。


長野セミナー 最後に各パネリストより

山下 恭弘 教授:
次世代省エネ基準で満足することなくより高い省エネが必要です。普及すればコストも下がる、広めていきましょう。

ハンス・エーク氏:
皆さん、イエテボリに来て無暖房住宅を実際に見てください。次に長野を訪れた時は無暖房住宅が出来ていて、是非そこに宿泊したい。

友子・ハンソン:
生活の質が高い人生がいかに快適か、金額に換算出来ないと思います。質の悪い物は買わない、良い物を求めることが必要です。

堀内 正純事務局長:
会場いっぱいの皆さんの熱気で、長野に高断熱住宅
や外断熱が広まることを、期待します。

大きな拍手がおこり、長野講演は大成功に終わった。


長野から次の開催地 東京へ

長野駅から東京行きのあさまに乗る。皆、講演の成功で安堵感が漂う。車内で軽食を取り、東京まで休息を取った。


新幹線のハンス氏と私東京駅に着き、友子さんと別れ、猛者連はいざ祝宴へ

東京駅地下のミンミンなる行きつけの中華風居酒屋へ入る。
狭い店内で、私はウーロン茶で私以外は紹興酒で乾杯だ。
ハンス氏に中華料理を皆で説明し,美味しくいただいた。
日本語を英訳した旅行用会話ブックをハンス氏に渡す。
これは、堀内事務局長がハンスと同行する私に用意してくれた物だが、ハンス氏はいたく気に入り、本を開きその中の一字を指差した。
よく見ると『お疲れ様でした。』とある。


居酒屋のハンス氏と私

来日して、時差もあったはずなのにすぐの講演を終えて疲れているハンス氏から、労いの言葉をかけられ(指差され)ハンス氏の優しさに触れた全員はいたく感動した。
これから続く各地での講演に、臨む気力が湧いてきた夜だった。


戻る ページトップ

投稿者 sotodan : 2005年05月21日 20:51