Vol.003 衆議院本会議

2002年4月5日 衆議院本会議
民主党・無所属クラブ、阿久津幸彦 議員

- 阿久津幸彦君 民主党の阿久津幸彦でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりましたマンションの建替えの円滑化等に関する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)
私は、衣食住の中で、住は極めて重要なものであり、その国や国民を最も的確に伝える象徴的な意味を持つものと考えております。例えば、住まいを見れば、その国やそこに住む人々の おおよその価値、内容を察することができます。文化も感性もモラルも、教養も歴史も、そして未来までも、住まいを見れば、その時代の私たちの生き方がすべてわかってしまうのです。
そこで、まず、戦後の我が国の住宅政策についてお伺いいたします。
1970年代、日本は、欧米から貿易黒字批判にさらされていました。そんな中、1979年、フランスのル・モンド紙に掲載されたのが、有名なウサギ小屋の記事です。ウサギ小屋に 毛の生えたような家に住む働き中毒の国と揶揄された当時の日本人の生き方及び我が国の住宅政策をどのように評価するのか、扇大臣にお伺いいたします。(拍手)
続いて、1980年代から1990年代のバブルとその崩壊の時代において、私たち日本人の生き方及び我が国の住宅政策をどのように評価するか、バブルの総括とともにお答えいただ きたいと存じます。
住まいがその時代の生き方を象徴するのであれば、1970年代までの日本と、その後のバブル及びその崩壊の時代の検証は、21世紀の私たちの生き方を見直す上でも、また、住宅 政策を考える上でも大切なことです。
私は、ウサギ小屋に住む働き中毒と揶揄された1970年代までの日本の住宅政策は、安かろう悪かろうの大量生産だったのだろうと思います。そして、そこに住む人々の生き方は、働き中毒と言われようと、まさに、なりふり構わず、豊かさを夢見て、子供のため、家族のため に働いた日々だったのでしょう。ただ、そうした時代の先輩たちによる、汗水垂らして働いた努力というものを、私たちは決して軽視してはならないと思います。
しかし、1980年代、それまでとは人が変わったように投機に走り、バブルに突入していく人々のさまは、今振り返れば、やはり異常でした。経済的な富を得れば得るほど高慢とな り、汗水垂らして働くことを忘れてマネーゲームにふける日々は、今思い出しても恥ずかしいほどです。
そのころの私たちは、ブランド品とともに、ただ高いだけの高級マンションを買って喜んでいたのです。そして、本来こうした経済のひずみを正すべき政治もまた、マンションやオフィ ス建設の推進を叫び、バブルをあおることに終始してしまいました。やがてバブルが崩壊し、値段の安くなった高級マンションの残したものは、多額のローンだけだったのです。
西暦2002年、経済指標の一つである株価は、ちょうど二十年前の水準にあります。歴史にもしはありませんが、もし、皆さんが20年前の自分に戻れるとしたら、再びバブルに酔い しれる道を選ぶでしょうか。私が問いたいのは、バブルのとき、国民は本当に幸せを感じていたのかということなのです。
私は、民主党新人議員に問われた、政治とは何かというアンケートの中で、政治とは国民を幸せにする仕事と答えました。幸せとは何か、どうしたら幸せになれるのか。今、バブルの総括を問うことは、私たちの生き方を問い直すことにほかなりません。(拍手)
こうした本当の豊かさと住まいの関係を考えるとき、私は、我が国がこれから進めようとしている住宅政策に大きな危惧を抱いております。その象徴が高層マンションです。バブルの時代、地域住民から、また観光客からも愛されないような冷たいビル群が乱立したあの時代の反省として、今、もっと地域の歴史や文化、自然を大切にし、それを生かしていく新しい町づく りの試みが、この日本においても広がりつつあります。
私は、これからの日本においては、人と自然、歴史と文化が調和した、もっと温かい都市を日本の風土の中でつくっていきたいと考えております。それには、都市や住まいを単なる投資 の対象とみなすのではなく、人間の生活の場としてとらえることが必要なのです。
マンションに関しても、景観や質を考慮した上で、よいマンションにはしっかりとした修繕を重ねながら、できるだけ長く使うという考え方があってもよいのではないでしょうか。
例えば、東京・原宿の表参道には、有名な同潤会アパートがあります。もう何年になるのか、大変に古い建物ですが、ツタの絡まったその外観は原宿の風景にも溶け込み、何とも言え ぬ味わいを感じます。また、長年住んでいる人にお話を伺うと、アパート全体が家族のような一体感があるということでした。あのバブルの時代とは全く違う価値観、生き方、そしてコミ ュニティーがそこにはあります。
そこで、国土交通大臣にお伺いします。
人間の生活の場、住環境としての高層マンション、超高層マンションの是非をどのようにお考えでしょうか。
戦後の日本の住宅政策を振り返ってみますと、今、我が国が推し進めようとしている住宅政策、さらに言えば都市政策は、バブル時代のそれと全く同じであり、何の総括もなされていな いと言わざるを得ません。この間、小泉内閣肝いりの都市再生の名のもとに進められてきた、土地収用法の改正、都市再生二法、建築基準法改正という一連の流れは、簡単に言えば、手続 の簡素化や容積率の緩和を通じて土地の価格をつり上げ、不良債権問題の解決を図るものであり、いわばミニバブルを起こそうとしているのではないかという大きな危惧を抱いております。そして、今回のマンション建てかえ法案も同じ性格ではないかと心配しているのです。
都市再生については、国土交通委員会の質疑でも、扇大臣と大分議論させていただきました。その議論の中で、東京・日本橋を例に挙げて、歴史や文化の薫りあふれる都市の大切さを 訴えた大臣の答弁に、私は深く共鳴いたしました。
確かに、日本橋は日本における交通の起点であり、橋そのものが貴重な文化遺産であるにもかかわらず、周辺には高層ビルが乱立し、川は汚染され、橋の上を覆うように高速道路を通し てしまったため、圧迫された暗い場所になってしまっています。まさに、これまで日本が追い求めてきた豊かさや幸せ、それが何であったのかを象徴するのが、あの日本橋の姿だと思うのです。(拍手)
質実の精神というものがあります。それは、質の高い、実のある社会をつくろうという精神のことです。日本がバブルを経験し、バブルを終えた今、日本人一人一人、そして私たち政治 家一人一人の幸福観が問われています。
そこで、扇大臣に伺います。
単なるバブルの再来ではなく、歴史と文化の薫りのする、人と自然が調和した都市再生を目指すつもりはおありでしょうか。そして、歴史的文化遺産である東京・日本橋を復興させる意気込みについて、ぜひお聞かせください。
本題であるマンションの建替えの円滑化等に関する法律案について、具体的にお伺いします。
国土交通省の推計によると、全国のマンション戸数は約380万戸、マンション居住人口は約1千万人、日本全体の約10%を占めます。都市部ではこの割合はもっと高く、例えば私 の地元八王子の場合、総人口52万人に対し、マンション、アパートに居住する総数は約20万人、40%に上ります。マンションは、我が国の国民にとって重要な住まいの一形態とな っていることは、言うまでもありません。
マンション居住者の多くは、これまで、一戸建ての持ち家を買うまでの仮住まいという意識しかなかったため、居住者間の結びつきが希薄で、管理がずさんになったりする傾向が見られ ました。ところが、ここ10年の間に、居住者の意識は大きく変化しました。それは、永住するつもりのマンション居住者が、いずれ移転するつもりの居住者を上回ったからです。これは、マンションを一生の住まいとしていこうという居住者意識のあらわれであり、建てかえや修繕による、世代を超えたマンションの再生・循環システムが望まれているわけです。
まず、本法案の前提となるマンション建てかえの築年数の目安についてお伺いいたします。
築年数の目安は30年と言われていますが、これは少し短過ぎるのではないでしょうか。欧米のマンション建設には、日本のような内断熱ではなく、外断熱による構造を義 務づけられることが多く、内壁の結露やカビ等もなく、50年でも100年でも長もちする構造になっていると言われております。日本でも、技術的には何の問題もなく、50年、100年もつマンションを建てることができるそうです。
そこで、お伺いします。マンション建てかえの築年数について、どのような見解をお持ちでしょうか。
本法案で一番心配されるのが、建てかえの円滑化を急ぐ余り、建てかえに参加したくても参加できない高齢者や低所得者等の弱者に対して、しっかりとした配慮がなされているのかという点です。
特に近年の不動産価格の下落により、多額の負担金を強いられるケースが想定される一方、参加を希望しない場合に支払われる売り渡し価格も時価であるために、十分なお金を手にする ことなく、事実上、住みかえが困難となって路頭に迷うことさえ考えられます。そこで、扇大臣に、マンション建てかえに係る居住安定措置についてお尋ねします。
最後に、現在、10万戸とも13万戸とも言われる老朽化マンションの中で、マンション居住者の合意が形成され、実際に建てかえに及んだものは、わずか70件にすぎないと言われてい ます。
今回のマンションの建替えの円滑化等に関する法律案は、合意形成が難しいと言われるマンションの建てかえに道を開くものですが、建てかえに参加できない弱者への配慮や、修繕の選択を阻むものであってはなりません。
よいものを大切に長く使うという質実の精神を私たち日本人は決して忘れてはならないと思います。これからの国土交通行政が、破壊と造成から再生と保全に変わるべきことを強く訴え、私の質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
 
- 国務大臣(扇千景君)
(国務大臣扇千景君登壇)
阿久津議員から私に、7問に及ぶ御質問がございました。
まず、70年代の日本についてのお尋ねでございます。
安定成長期に入ったとはいいながら、ちょうどそのころは、月186時間を超える労働時間など、働きバチと言われる批判もあった時期でございます。
住まいの面では、戦後の絶対的な住宅不足を解消し、そして1973年には、すべての都道府県で住宅数が世帯数を上回る、量的な充足が達成されたときでございました。ただ、一方で は、住宅の一戸当たりの面積が約80平方メートルと、今おっしゃったように、広さの面で極めて不十分でもございました。
このような中で、国民生活の質の向上が大きな政策目標として認識されるとともに、とりわけ、住宅の質の向上が最も中心的な課題として取り上げられるに至りました。このため、住宅政策としては、従来の量的充足から質の重視へと政策の方向転換を図ったところでございます。
2つ目には、1980年代から90年代にかけてのバブル崩壊後の御質問がございました。
80年代後半以降、地価が急速に上昇して、住宅価格につきましても、年収倍率が90年には7.0倍に達するなど、住宅の価格と取得能力の著しい乖離が生じておりました。そのために、住宅の取得能力を高める一方、住宅価格の低下を図るなど、需給両面にわたる対策を講じることが住宅政策の中心課題となったのでございます。
その後、90年以後のバブル崩壊の過程におきましては、地価の下落が急速に進展して、住宅価格の年収倍率が2000年には4.3倍へ下落し、住宅取得が容易になるなど改善も見ら れた反面、価格の下落による含み損や、所得の低迷を背景とする住まいへの負担感の高まり等が新たな課題となってまいりました。また、住まいに対する国民のニーズも、一戸建て持ち家住宅に加えて、賃貸住宅、都心居住、バリアフリー住宅等、個人のライフスタイルに応じた多様なニーズが生じてまいっております。
このような中、住宅政策としましても、これまでとってきた住宅の質の改善をさらに一歩進めて、国民の多様なニーズに対応できるような、良質なストックの形成を図ることに努めてま いったところでございます。
3つ目には、超高層マンションに関しての御質問がございました。
職住近接を図り、ゆとりのある生活を実現するために、都心居住の推進が重要な課題となっております。都心居住の実現に向けて、都心地域など土地の高度利用が必要とされる地域にお きまして住宅を整備していくためには、オープンスペースを確保しつつ建物の高層化を図ることも有効な手段の一つでございます。
特に、近年、都心ならではの眺望とか新しい都市生活を求めて超高層マンションに高い人気が集まっておりますが、このような新しい居住者のニーズにこたえることも視野に入れていく 必要があろうと思っております。
4番目には、都市再生の進め方についてのお尋ねがございました。
都市再生は、都市の抱える二十世紀の負の遺産を解消するとともに、我が国の都市を、歴史と文化を継承しつつ、生活する上でも豊かで快適な、さらに経済活力に満ちあふれた都市へと 再生しようとするものでございます。
都市の再生に当たりましては、石畳あるいは蔵など、町並みの整備とか電線類の地中化等、歴史と文化を生かした町づくりの推進を図るとともに、都市公園の整備、屋上緑化等による緑 豊かな環境の創出、河川の水質改善など、人と自然が調和した都市の再生に取り組んでまいりたいと考えております。
5番目には、日本橋の復興についてのお尋ねがございました。
かつて、我が国の五街道の起点でございました日本橋は、現在では、首都高速道路がその上空を覆っており、潤いと品格のある都市空間の形成という観点から御指摘を受けることも少な くありません。また、日本橋は、明治時代の石橋として今なお現役であり続けておりますし、平成11年には重要文化財に指定されるなど、貴重な文化遺産でもございます。
そこで、この日本橋地区を初め、東京都心部のあらゆるところで、首都高速道路のあり方について、有識者の委員会によりまして検討をいただきました。去る4月2日に提言として御報告をいただいたところでございますけれども、この中で、私がいつも申しておりますように、 日本橋地区の首都高速道路の再構築について、沿道の建築物と一体的な整備を行うことを提案されました。
それにおきまして、関係者の方々の合意形成や、首都高速道路の再構築と都市再開発の調整等の課題がございますけれども、21世紀のオフィスの創造と交通インフラの改善を一体的 に実現する新しいアイデアとして、都市再生の観点からもぜひ実現していきたいと考えております。
6つ目には、マンション建てかえの目安とする築年数についてのお尋ねがございました。
マンションの耐久性は、個々のマンションの施工とか維持管理の状況等によりまして異なるものでございまして、住戸の面積あるいは設備の水準が低いために建てかえが望 まれる場合もございますことから、建築後年数の目安を一般的に示すことは難しいとは考えておりますけれども、これまでの実績を見ると、30年から40年で建てかえられ るケースが多くなっております。
いずれにしましても、マンションの建てかえの検討に当たりましては、建物の状況あるいは維持修繕を続けた場合との比較などに関する的確な情報に基づいて、区分所有者 間で十分な議論が行われた上で判断されることが重要であると考えております。
最後に、7つ目に、マンションの建てかえに係る居住安定措置に関するお尋ねがございました。
マンションの建てかえ事業の施行者並びに国及び地方公共団体は、国土交通大臣が定める基本方針に従って、賃借人及び転出区分所有者の居住の安定の確保に努めなければならない旨を、本法律案の第90条において明記してございます。
高齢者など住宅に困窮する転出者に対する支援として、公営住宅等への優先入居、また、従前居住者用賃貸住宅に係る家賃対策補助、移転料支払いに対する補助などを行うことを基本方 針に定め、実施することにより、最大限に居住者の安定に配慮していきたいと存じております。
以上、お答え申し上げます。


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投稿者 sotodan : 2002年04月05日 21:07