"まほろば" お茶の水女子大学名誉教授 田 中 辰 明

まほろば

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お茶の水女子大学名誉教授 田 中 辰 明


古事記に「やまとは 国のまほろば たたなづく青垣 山ごもれる 大和しうるわし」という歌があります。この歌は倭建命(ヤマトタケルノミコト=日本武尊)が、旅先より大和を偲んだ望郷の歌だそうです。この歌の中の「まほろば」とは美しいところ、素晴らしいところ、優れたところを意味します。平成23年はうさぎ年で「ぴょんぴょん跳ねて景気を良くしましょう」などという年賀状も頂きましたが、とんでもない、地球が跳ねてしまいました。その結果3月11日に東日本大震災が起きたのです。その後も不気味な余震が続いています。それに人災ともいえる福島の原発事故が起きてしまいました。早稲田大学名誉教授の尾島俊雄先生(元日本建築学会会長)は平成22年10月に「日本は世界のまほろば、消えるもの、残すもの、そして創るもこと」(中央公論新社)という本を著わしています。この本の中で原子力発電にも触れています。柏崎原子力発電所を見学し「本体に対する安全対策は万全であったことに比べて、周辺対策が不十分であった事、理工学的安全策と社会学的安心感のずれが最大のネックであったことを改めて確認する」と記されています。核分裂を繰り返し、湯を沸かす巨大な装置である原子炉は理工学的な安全策がなされていましたが、冷却水ポンプが津波によって破壊されたという事は周辺対策が不十分であったことを尾島名誉教授は予見して述べたのでしょう。日本が進めてきた電力供給システムの弱点もはっきりしました。地方に巨大な発電所を作り、遠く離れた都市に送電し、電力需要を賄うシステムは事故があった時の影響があまりに大きい事もはっきりしました。筆者がよく引き合いに出すドイツでは発電所は町の中にあります。それも大規模発電所ではありません。従って発電所の排熱も地域暖房に使用され、エネルギー効率は良くなっています。そして住宅は外断熱が施されています。わが国では太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオエネルギーなど自然エネルギーを総動員することも大切でしょう。そして住宅に外断熱を施し再び「日本は世界のまほろば」と言われるように再建を行っていきましょう。


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投稿者 sotodan : 2011年4月 5日 11:12