復 興 提 言 信州大学名誉教授 山下 恭弘


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信州大学名誉教授 山下 恭弘

2011年3月11日午後2時46分に起きた大地震、続いての余震、数度の大津波は例を見ない大被害をもたらし、さらに東京電力原子力発電所の放射線漏洩による被害が拡大しています。

大震災でなくなられた方、避難場所で過ごされている方、放射線などで避難を余儀なくされている方、風評被害で畜産、農業が成り立たない方、地震による液状化により地盤沈下で家屋が傾くなど被害を受けて、今なお断水で不自由されている方、さまざまな被害、影響が被られている皆様に心よりお見舞い申し上げます。

大震災後は初冬並みの寒さが続き、避難場所の学校体育館内は暖房器具が働かないこともあって相当に冷え込んだのです。しかも天井が高く、床下は外気に近い温度環境では、避難者、とりわけ高齢者、乳児を抱える主婦などの弱者を苦しめることになりました。そして助かった人の中にも避難場所等で何らかの原因で昨日まで元気でいた人が亡くなるケースが見られます。体育館は耐震設計をされていても、寒さの対策がなされていないためにこのような結果を招いたのです。人命軽視としか言いようがありません。

日本の建物は公共施設、集合住宅、戸建て住宅はpassiveな断熱強化による冷暖房・省エネルギー化を軽視して、高効率なヒートポンプ冷暖房技術で対応してきています。

公共施設、大型建物のRC造内断熱を外断熱工法に変えることのメリットはわかっていても、イニシャルコストが大きくなるなどの理由から殆ど普及に至っていません。建築資材の変更、施工方法の変更などであって、根本的なコストアップの要因ではありません。
変革に一歩踏み出す推進力にならないのは、社会の抵抗勢力が存在するからです。そのためグローバルスタンダードになっているpassiveな断熱強化による冷暖房・省エネルギー化を受け入れないのです。実際、国の省エネルギー基準のレベルが低くすぎてpassiveな断熱強化を達成できないのです。

避難施設、医療施設、老健施設、学校、庁舎など公共施設は、耐震設計の重視は勿論でありますが、passiveな断熱強化によって最低限生命を維持できる室内温熱環境の建物にすべきであります。


長野県のpassive介護サービス施設.pdf



提 言

この度の東日本大震災復興にあたって、国の省エネルギー基準による脆弱な建物を造り続けることを認めることはできない。
現状を打破するためには、環境立国を目指すドイツならびに北欧諸国からグローバスタンダ―ドなpassive手法による冷暖房・省エネルギー技術の供与を依頼するしか打開の道はない。
理由は、日本は潜在技術が十分にあるにもかかわらず、従来の設計・施工を継続しようとする保守的な考えが底流にあるためである。そして既定の利権構造を覆す変革する力、勢いに欠けているためである。

1. 緊急に建設しなければならない仮設住宅の仕様がわかってきたが、夏の暑さ、冬の寒さに耐えるのだろうか。ドイツ仕様の仮設住宅を持ちこみたい。

2.復興に伴う福祉施設、病院などの公共施設の建設にあたって、ドイツのpassive技術を官ではなく、民が受け入れるshock療法を提案したい。
規模:東北拠点都市仙台市、盛岡市、青森市などに各施設のモデル建設

3.復興に伴う戸建て住宅建設にあたって、グローバルスタンダードなpassive手法による省エネルギー技術の導入を官ではなく、民が受け入れるshock療法を提案したい。
規模:東北拠点都市仙台市、盛岡市、青森市などに100棟

公共施設は、NPO組織などが委託の受け皿とする。
戸建て住宅は、実績のある設計事務などが委託の受け皿とする。

導入のインセンティブを与えるため断熱気密建材の一括供与or先行投資実施などを提案したい。

受け皿については、
1の公共施設は、例えばNPO法人 外断熱推進会が技術講習、設計施工・監理を行う組織を立ち上げる。

2の戸建て住宅は、実績のある設計事務所、コンサルタントが連携して断熱気密設計、施工・監理を行う組織を立ち上げる


委託を受けた組織は、国の建築基準法を遵守した上、グローバルスタンダードな断熱設計、施工・監理をして全ての資料を公表する。


                   
以上を遂行することにより、activeな環境の建物からpassiveな環境の建物に転換して省エネルギー化が進むことを期待する。


   
2011年4月3日     信州大学名誉教授 山下恭弘             

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投稿者 sotodan : 2011年4月 5日 10:40