国際規格ISO化 「断熱材に関する国際規格の状況」田中辰明先生

わが国では従来国際規格は「これが日本で適用されたらどのような不利益が生じるか?」という観点から審議されてきた。しかし世界はグローバル化され、米国のサブプライムローンの問題が遠く離れた日本経済にまで暗い影を投げかける時代になっている。やはり「国際規格を制する者は企業を制する」と考えで断熱材の分野においても日本発の国際規格ができても良いのではないかと国内審議会では話し合っている。

外断熱に関する欧州規格は元来外断熱が開発されたドイツでドイツ工業規格(DIN)になっていた。これを元に欧州の規格委員会(CEN)で審議が行われ、欧州規格(EN)となったものである。現在筆者が承知している外断熱の欧州規格を表-1に示す。

表-1 外断熱の欧州規格
規格番号 (年) 英語: 和訳
EN 13162 (2001) Thermal insulation products for buildings. Factory made mineral wool (MW) products. Specification: 建築用断熱材-工場生産による鉱物ウールの特性
EN 13165 (2001) Thermal insulation products for buildings. Factory made rigid polyurethane foam (PUR) products. Specification: 建築用断熱材-工場生産による硬質発泡ポリウレタンの特性
EN 13171 (2001) Thermal insulation products for buildings. Factory made wood fibre (WF) products. Specification: 建築用断熱材-工場生産による木毛繊維の特性
EN 13500 (2003) Thermal insulation products for buildings. External thermal insulation composite systems (ETICS) based on mineral wool. Specification: 建築用断熱材-鉱物ウールによる通気層の無い外断熱の特性
EN 13495 (2002) Thermal insulation products for building applications. Determination of the pull-off resistance of external thermal insulation composite systems (ETICS) (foam block test): 建築用断熱材-発泡法による通気層の無い外断熱システムの特性
EN 13496 (2002) Thermal insulation products for building applications. Determination of the mechanical properties of glass fibre meshes: 建築用断熱材-グラスファイバーメッシュの機械的特性の決定
EN 13497 (2002) Thermal insulation products for building applications. Determination of the resistance to impact of external thermal insulation composite systems (ETICS): 建築用断熱材-通気層の無い外断熱システムの衝撃強度の決定
EN 14318-2 (2002) Thermal insulation products for buildings-- In- situ formed dispensed rigid polyurethane foam (PUR) products-- Part 2: Specification for the installed insulation products: 建築用断熱材-現場発泡硬質ポリウレタンフォーム(PUR)-- Part 2: 断熱材設置のための仕

最近のISO/TC163国際会議は平成20年4月14~18日の間、中国の南京市で開催された。経済発展の著しい中国がオリンピックだけでなく多くの国際会議を開催し国際化を促進しようとする一環と考えられる。事実歓迎振りは大変なもので、若い担当者の力の入れ方に頭が下がった。ISOTC163の中でSC3は断熱材料を扱っている。国際会議の名議長は「いかにインド人に黙らせて、日本人に発言を促す事に長けているかにかかる」という冗談が言われるが、今回の議長エルムロート博士(元スウェーデン・ルンド大学教授)は今回で引退ということもあり、そのような配慮に少々欠けていたように思われる。

インドの代表に長々と喋らせ、結局「従来の建材の試験方法に関する規格は寒いところで断熱材が耐えられる試験しか考えていない、インドのような蒸暑地域における試験条件も入れてもらわないと国際規格とは言えない」という主張を認めてしまったのである。そして平成18年に東京会議で採択された欧州規格となっている外断熱に関する規格を国際規格ISOにするという決議があり、かつ平成19年にヘルシンキで開催された会議では外断熱は地球温暖化防止に重要な技術であるので、緊急審議(Fast Track)とするという議決も行われていた。これが南京会議でひっくり返り、蒸暑地域の条件も入れた試験方法ということになってしまった。それが為に緊急審議から降ろされてしまったということになる。 緊急審議とは外断熱の欧州規格をそのまま国際規格とする事の最終投票となるはず (FDIS)であったのが恐らく (DIS) からの審議となるのであろう。

エルムロート議長は筆者が最初にISOの国際会議(昭和60年に東京で開催)に参加した際に既に議長を務めておられた大変なベテランである。国際会議が英語で行われるといってもインド訛り、ドイツ訛り、フランス訛り等の英語が飛び交うのをうまく聞き分け、正確な判断をされるという才能を持っておられる。筆者がインド代表の英語を正しく理解できない内に事は進んでしまい、質問も出来なかった事を今さら恥じ入る次第である。

筆者は戦中、戦後の事を知っている年代で正直言って英米に対する恐怖心が心の中のどこかに存在する。学校の英語の授業も“a”と“the”を間違えただけで大変なお叱りを受けるという教育を受けてきた。その結果英語を間違えては大変という事が念頭にあり、どうしても国際会議では指名されなければ喋らないということになってしまう。しかし現在の現役の方々は、そのような事はなく、今後は大いに国際会議の議長役を務めるようにもなっていただきたいと望んでいる。

外断熱工法のメリット
  1. 断熱材が建物躯体の外側にあるので、建物が服を着たようになり外気温度や日射の変動から保護される。したがって建物躯体にひび割れが入りにくい。従って建物の寿命の長期化に役立つ。
  2. コンクリートの熱容量が室内側に入るので、暖房や冷房が切れても急激に室温が変化しない。すなわち快適性に富む。
  3. 壁体の内部に結露を起こすことがない。したがってカビ発生、ダニ発生の被害を抑制できる。
  4. 既存の建物に断熱改修を行いやすい

国際規格化を計ることによって、わが国においても健全な外断熱工法が発展することを希望するものである。

お茶の水女子大学名誉教授  田中 辰明 (ISO/TC163・SC3国内委員会主査)

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投稿者 hpnew : 2008年6月 6日 10:51