第5回欧州視察「スウェーデン・ドイツ団地再生と外断熱の旅」(2004年8月26日~)を終えて(その1)

写真と解説PDF:スウェーデン・ドイツ「団地再生と外断熱の旅」堀内正純(PDF1.5KB)

今回から3回の連載で、8月26日から9月5日に実施された「スウェーデン、ドイツ、団地再生と外断熱の旅」チームの視察の様子をご報告します。

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写真中央が宮坂団長

はじめに

私たち17名の「団地再生と外断熱の旅」チームは8月26日から9月5日までスウェーデン、ドイツを回り、主に集合住宅の改修現場を視察すると共に、無暖房住宅についての講義を受け、住宅視察を行って参りました。

今回の旅のメンバーは、外断熱建築を推進している企業、設計事務所などの第一線で活躍する若手が中心となり、さらに長年にわたってマンションの管理や補修に携わってきた方々によって構成されていました。

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チャルマシュ工科大学集合写真

私は今回の旅で、(1)外断熱工法が新築・改修を問わず如何に一般化しているか、(2)外断熱の工法については湿式、乾式いずれであれ最も建築対象に相応しい工法が、両者の併用も含めて採られていること、(3)景観、街並み、住み心地といった「文化」、原則として「壊さない文化」、の三つのポイントを見て、聞いて、触れて実感した上で、工法、材料などの詳細について一層の理解を深めてもらいたいと考えていました。

特に(2)の工法の選択については、わが国ではどの工法や建材を選択するかでいわば湿式派、乾式派に二分され、その優位性を巡って当推進会議に尋ねられる機会が最近多くなっておりました。いずれの工法もきちんと基準に叶う厚さの断熱材を連続して施工することによってその性能に遜色はなく、建築(改修)対象の特質、規模、外観等によって選択、或いは併用されるものであり、固定的に考えないほうが良いことを実感してもらえれば、ということです。

幸い、今回の旅行ではこの三つのポイントについては十分に実感をされたのではないかと思っています。湿式、乾式のこだわりも払拭されたのではないかと感じています。参加したメンバーの一人の方は、住宅を資産と考える以前に住み心地の良さで考えるべきですね、と感想をもらされました。居住空間の住環境、周辺との調和、コミュニティーの機能といった数々の要素のハーモニーが醸し出す住み心地の良さは、短期のスクラップ&ビルドという高度経済成長期以降のわが国の建築風土とは相容れないことに思いを馳せたのかもしれません。

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ハンブルグ 乾式と湿式の融合

ストックホルムにて

今回の旅は8月27日、ストックホルムの住宅公社の案内で1940年代に建設された団地の視察からスタート致しました。都心から地下鉄で僅か10分の地とは思えない木々の緑の豊かな地に、3階建てレンガ造集合住宅が芝生の中にゆったりと並び、静かな環境の中にその団地はありました。住民の好意で現在住んでいる40年代に立てられたままの住まいを見学出来ました。ストックホルムスヘム社建設部のT.クムリーン氏、都市計画局のシモン忍さんから建物の建設の歴史、設備等について説明を受け、住民の方からは住み心地等についての感想を伺いました。面積の計測方式の、そして生活スタイルの違いもあるのでしょうが、47m2、2部屋に台所、バスルームという(この当時は80%がこのタイプ)面積は決して狭くは感じませんでした。ランドリー関係は別棟の1階にあるランドリーセンターを自己申告制で共用する仕組みとなっていますがそこには40年代のプレッサーも残されており(飾りとして)、当時からこうした共用を可能とするコミュニティーが機能していたことがわかります。

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ランドリー写真

続いて同じ団地内の改修が済んだばかりの住居を見学致しました。環境条例があり歴史的景観保持のため外断熱改修は行われないのですが、36cmの厚さのレンガ躯体は断熱性能があり、そこへ複層ガラスの採用と木製或いは樹脂サッシを取り付けることで改修をしています。ここでは換気システムとサッシの吸気口、改修された水周りと交換可能でしかも大変細い配管に皆の興味が向けられていました。改修で一部バルコニーが取り付けられている例を見ましたが、この取り付けでは床のコークス部分に通すということで40年代当時は床の断熱にコークスを使用していたことが知れました。

この日は次に市の都市計画局を訪問、都市計画担当のP.ルンデワル氏から2005年住宅博会場のテンスターについて、更にストックホルムの都市計画についてお話しを伺いました。テンスター地区については1975年の100万戸計画に基づいて建てられ6〜8階建てが中心で現在の居住者は90%が外国人労働者であり、住宅博までに住宅水準を高めると共に、環境の改善、語学を含む就業のための訓練、民主主義の学習を行うとのことでした。また改修のハードについては陸屋根の修理とその上に小さな若人向けアパートを増築、1階には商業施設等を設けるとともに、建物の妻側の階段室に新しいアパートを作るなど新築、上増築、横増築、改築を行う構想の説明がありました。これは後に触れるイエテボリにおけるゴールドスターン地区と同様に、外国人失業者の問題を団地再生を通して解決して行こうという試みであり、その点においても、また改修なので解体はほとんど無く廃材は出ないということも大変意味あることだと感じられたのではないかと思います。


ストックホルム都市計画局 P.ルンデワルさん

28日は市内の最新の団地であるハーマビー・ショースタッドを訪れました。市内の古い町並みを見てきた後で、こうした最新のデザインのもと外断熱の建物が連なる光景は、一部で指摘される外断熱のデザイン性の限界を全く感じさせないものであり、大いに参考になったことと思います。

このあとヨーロッパ最大の建材展示場へ向かいました。DIYが定着しているお国柄かさまざまな建材、器具が並べられ、積めるのかと思える程の大荷物を車に積んでいく模様が大変興味をそそりました。勿論、外断熱の建材、サッシが並んでいたことはいうまでもありません。この後、旧セントラルステーション跡地を再開発して作られたソルダ・ステーション団地を訪れました。一部修繕中の高層マンションを基点に公園を囲むように半円形に建てられた建物はローマのコロセウムを想わせるもので、ここでも外断熱の意匠性の高さを感じさせられました。この再開発は都市の質の再生を図るプロジェクトとして進められたもので、アメリカンタイプの建物と古いヨーロッパタイプを融合、パブリックスペースを大切にしているとのことでした。


ストックホルムの新しい団地 ハーマビー・ショースタッド

(つづく)

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投稿者 hpnew : 2004年11月 5日 03:14